大笹原神社には、古くから「天王神事」と呼ばれる古式神事が伝えられてきました。

この神事は、神さまを氏子の家へ迎え、一定の期間お祀りしたのち、再び神社へお送りすることを特徴としています。

ただし、天王神事の形や作法は長い年月の中で変化しており、時代によって行い方にも違いがみられます。

ここでは、『国宝 大笹原神社の歴史と美術』などに記録された内容をもとに天王神事の様子を紹介します。

「天王さん」を家へ迎える

天王神事では、神さまをお祀りする家の主人を「頭人」と呼びます。

資料には、旧暦の正月三日、正月十九日、正月二十日、六月十五日など、それぞれの日に神さまをお祀りする頭人が定められていたことが記されています。

頭人の家では、神さまを迎えるための準備を整え、家の中に神さまをお祀りしました。

提灯を持つ役は頭人の息子が務め、神事は父から子へと受け継がれてきました

頭人の家でのお祀り

頭人の家に迎えられた神さまは、大切にお祀りされました。

資料に残された写真には、神棚の前に竹を組んだ台を設け、供物を供えている様子なども記録されています。

また、かつては神さまを薦で包み、家の屋根裏にある柱などに固定してお祀りする形もみられました。

神さまは薦の内側に納められ、大切に包まれていました。

神さまを神社へお還しする

神さまを神社へお還しする日には、宮司が提灯を持った氏子総代とともに頭人の家を訪れます。

頭人の家では、これまでお祀りしてきた神さまが神社へお帰りになるための祭典が行われます。

祭典を終えると、宮司と氏子総代は神さまを奉じて頭人の家を退出します。

この際には、神さまに人の息がかからないよう言葉を交わさず、静かに家を後にするという作法が伝えられています。

その後、神さまは大笹原神社へお還りになります。

神社と氏子の家を往来する神さま

天王神事の大きな特徴は、神さまが神社の中だけに留まるのではなく、氏子の家へ迎えられ、そこでお祀りされたのち、再び神社へ戻られることにあります。

神さまを家へ迎え、日々の暮らしの中でお祀りし、時が来れば再び神社へお送りする。

こうした神事の中に、大笹原神社と地域の人々との深い結びつきを見ることができます。

天王神事は長い年月の中で受け継がれてきた神事であり、大篠原で生きる人々の歴史でもあります。